2018年山縣勝見賞受賞者決定

 当財団は、2008年に設立者の名前を冠した「山縣勝見賞」を創設し、海運を中心とする海事交通文化の研究及び普及発展に貢献された方々を顕彰し、その研究成果(著作・論文)や業績を対象として表彰する制度を発足しましたが、このほど「2018年山縣勝見賞」の受賞者が下記の通り決定しましたので、お知らせ致します(敬称略)。
 なお、受賞者への贈呈式は7月20日(金)海運クラブにて行います。

≪著作賞≫

岸本宗久(きしもとむねひさ)編著『海上衝突予防法史概説』
(成山堂書店2017年2月発行)

受賞者略歴
 1937年生まれ。東京商船大学商船学部航海科卒業、太平洋海運(株)入社(海上勤務)、その後甲種船長免許(現、一級海技士(航海))、海事補佐人登録、1974年明治大学法学部法律学科卒業、1976年 小川田川二宮法律事務所(現、小川総合法律事務所)入所。以降、海事補佐人として各種海難審判補佐並びに海難事故調査に従事する。現在、日本海事補佐人会副会長、日本船長協会理事。著書に『船舶衝突の裁決例と解説』(共著、成山堂書店)、論文に「マラッカ王国海法」(日本船長協会)、「舷灯考」(海洋会会誌『海洋』)など。

受賞理由
 長い間、船舶の衝突を予防する方法は船員により、なかば慣習的に実施されてきたが、成文化されたのはわずか150年ほど前のこととされている。本書は、成文化されるはるか前の時代から現在までの衝突予防策から法制度までを、世界各国の法令・条約の変遷に言及しながら、多くの学術書にありがちな難解な用語や表現を可能な限り少なくし、大変読みやすい平易な文章で、初心者でも理解しやすいように書かれている。また、海上衝突予防法の抱える問題を過去・現在・未来にわたって網羅した歴史書的な一面も併せ持つ、啓蒙的な示唆に富む著作となっている。

≪論文賞≫

畑本郁彦(はたもとふみひろ)著「内航船の安全管理体制構築に関する研究」
(神戸大学大学院海事科学研究科/海事科学専攻 博士学位論文2017年9月)

受賞者略歴
 1970年生まれ。広島商船高等専門学校機関科卒業、川崎汽船(株)入社(海上勤務)。(株)海洋総合技研取締役、(株)海総研テクノフィールド代表取締役、NPO法人日本船舶管理者協会理事等を歴任し、現在成進海運(株)(機関長)勤務のかたわら、日本船舶管理者協会技術顧問。また、2000年広島大学工学部第一類(機械系)卒業(工学学士)の後、2017年神戸大学大学院海事科学研究科博士課程修了。一級海技士(機関)、海事補佐人。発表論文として、「内航海運の船舶管理における法的側面の課題」(『日本航海学会論文集』第136号)、「内航海運における船舶管理業務に関するガイドラインの改善」(日本海運経済学会『海運経済研究』第51号)など。

受賞理由
 日本の内航海運は、船員問題をはじめとする諸問題に対し、国土交通省の主導の下、グループ化による船舶管理会社を設立し、業務の効率化を推進する船舶管理会社活用政策を展開しているが、管理会社の安全品質が明示されていないことなどの理由で、実現されていないのが実情である。そのような現実的な問題意識に基づき、内航船の安全管理体制を構築する内航海運に必要な施策を具体的且つ分かりやすく明らかにしている点で大いに評価できる。また、日本船舶管理者協会・技術顧問として実務上の問題に日々向き合い、学界・業界の最先端の知見を得ながら問題解決に尽力している点で、学術的にも実務的にも非常に価値の高い論文と言える。

≪功労賞≫

今津隼馬(いまづはやま)(東京海洋大学名誉教授)

受賞者略歴
 1945年生まれ。東京商船大学商船学部航海科卒業。東京大学工学部、大学院工学研究科非常勤講師、東京商船大学商船学部教授を経て、東京海洋大学海洋工学部教授、理事・副学長を歴任。その間、船舶技術研究所、海上保安庁、交通政策審議会、人事院の研究員・専門委員などを務める。「避航法に関する研究」で工学博士(東京大学)。著書に、『双曲線航法』、『電波航法』(共著)、『避航と衝突予防装置』など。また、「衝突針路を使ったOZT(相手船による妨害ゾーン)を用いた衝突警報の検討」(日本航海学会誌Vol.188、2013年)などの論文がある。2013年、工業標準化(ISO)で経済産業大臣表彰を受賞。現在、東京海洋大学名誉教授。

受賞理由
 同氏は長年にわたり東京商船大学他にて教鞭を執られ、以来我が国の航海学界を牽引されてきた。その間、日本航海学会の副会長を歴任し、日本航海学会賞を二度受賞、また、多数の著書や論文を通じ、我が国航海学の第一人者であり続けてきた。また、学会の発展と有為な人材の育成に尽力し、多大な功績を果たした。

≪特別賞≫

谷川夏樹(たにがわなつき)(画家)

受賞者略歴
 1976年生まれ。兵庫県在住。13歳から独学で油絵を描き始める。2000年から、EARTHにARTという言葉が含まれることから、屋号をEARTH CONTAINERとして、コンテナを経済のみならず文化的側面から捉える作家活動をはじめる。油彩による平面作品と平行して、実物のコンテナに「コンテナくん」の顔をペインティング。世界を旅する本物のコンテナを通じてアートと社会の関わりについての可能性を探っている。2005年第24回新風舎出版賞特別賞受賞。著書に、作品集『EARTH CONTAINER#1-コンテナくん見た?』、『AloAloha!コンテナくんハワイの旅』、『コンテナくん』、月刊『かがくのとも』通巻588号『かもつせんのいちにち』などがある。

受賞理由
 『かもつせんのいちにち』、『コンテナくん』(いずれも福音館書店刊)ほか一連の絵本のモチーフとして船を取り上げ、とりわけ内航船の役割や深刻な船員不足を知り、内航海運の存在を広めようという意識で小学生や未就学児童に船や海運に親しんでもらうための絵本を上梓している。そのような活動を通じ、子供たちのみならず、その親の世代に対しても海事文化の理解に一役買っている点が評価できる。

                                                        以上