2022年山縣勝見賞受賞者決定

 当財団は、2008年に設立者の名前を冠した「山縣勝見賞」を創設し、海運を中心とする海事交通文化の研究及び普及発展に貢献された方々を顕彰し、その研究成果(著作・論文)や業績を対象として表彰する制度を発足しましたが、このほど「2022年山縣勝見賞」の受賞者が下記の通り決定しましたので、お知らせ致します(敬称略)。
 なお、コロナ禍のため休止していた贈呈式を7月18日の「海の日」前後に都内にて3年ぶりに開催する予定です。

   

≪著作賞≫
瀬田 勝哉著『戦争が巨木を伐(き)った―太平洋戦争と供木運動・木造船』
(平凡社 2021年1月刊)

受賞者略歴
 1942年生まれ。大阪府出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。武蔵大学名誉教 授。専攻は京都中世史、木の社会史・文化史。著書に『洛中洛外の群像』など。

授賞理由
太平洋戦争終結の2年前、逼迫した戦時体制の下、今まで知られることの少なかった、鋼船に代わり急遽始められた木造船建造計画を、全国各地で展開された伐採供木運動から説き起こし、膨大なデータを駆使して木造船建造の記録を残した、後世に残すべき稀有な業績と評価される。

   

≪論文賞≫
万谷 小百合著「海上衝突予防法の適用条文解釈における漁ろうに従事する船舶運航者と一般動力船運航者の差異に関する研究-自動運航船を見据えた現行法の基準値検証-」
(神戸大学大学院海事科学研究科博士学位論文 2021年3月)

受賞者略歴
 1997年東京商船大学卒業。長距離フェリー航海士を経て、海技教育機構海技大学校教授。専門分野は航海法規。著者に『二級・三級海技士(航海)口述試験の突破 法規編 6訂版』ほか。

授賞理由
 自動運航船の開発が様々な方面から検討されている状況で、海上衝突予防法に関連した船員の避航操船の数値化と、その利点や問題点を提案することで、今後の自動運航船への法的議論や運航基準を定める上で有益な資料となると期待される。

≪功労賞≫
山上(やまじょう) 徹氏(同志社女子大学名誉教授)

受賞者略歴
 1943年生まれ。日本大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。日本港湾経済学会会長を歴任。港や観光、ホスピタリティに関連の著書多数。

授賞理由
 長年にわたり港湾・物流・観光など広範囲の研究活動や幅広い分野の著作を通じ、わが国学界で活躍され、顕著な足跡を残している。こうした海事分野全般に対する多大なる貢献と功績は功労賞に値する。

≪特別賞≫
五十嵐 温彦(はるひこ)氏(太平洋戦争に於ける各船社航跡資料集の編纂に対して)

受賞者略歴
 1936年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業。川崎汽船入社後海上籍、陸上勤務を経て同社関係会社勤務後退職。2005年以降船主別戦時殉職船履歴集を編集、現在に至る。

授賞理由
 太平洋戦争で徴用された商船や漁船等の航海記録を船社ごとにまとめて出版し、資料館・図書館に配布する活動を長年にわたって続けることにより、わが国の海事交通文化の発展に寄与したことを評価する。

                                                     以上