2017年山縣勝見賞贈呈式開催

 当財団が海事交通文化の研究及び普及・発展に貢献された方々を顕彰するために、2008年に創設した「山縣勝見賞」は本年第10回目を迎え、7月20日(木)「2017年山縣勝見賞」の贈呈式を、海運クラブにて開催致しました。

「2017年山縣勝見賞」贈呈式における受賞者記念撮影 2017年7月20日 於海運クラブ
左から國領英雄氏(功労賞)、若土正史氏(論文賞)、西崎ちひろ氏(論文賞)、木原知己氏(著作賞)
(写真をクリックすると大きくなります。)

 受賞者、受賞者略歴、受賞理由は以下の通りです。

≪著作賞≫

木原知己著『船舶金融論-船舶に関する金融・経営・法の体系-』
 (海文堂出版2016年5月刊)

受賞者略歴:
 1984年九州大学法学部法律学科卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。主として船舶融資を担当し、営業第八部長、高松支店長を最後に同行退職。2005年に都内金融機関に入行し、船舶金融チームを立ち上げる。2011年、青山綜合会計事務所顧問に就任。その後、パートナーを経て 現在は同事務所海事スーパーバイザー。船主向け経営コンサルティングの傍ら、ファイナンスアレンジなどに従事する。現在、早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(船舶金融法研究)、センチパートナーズ(株)代表取締役、海事振興連盟三号会員などを務める。

受賞理由:
 船舶の建造あるいは購入にかかる必要資金を供給する「船舶金融」に関連する事項について、金融機関や会計事務所、並びに早稲田大学大学院法学研究科非常勤講師(「船舶金融法」講座担当)等の経験を通して会得した知見をもとに、1)金融論、2)船主経営論、3)法との接点といった論点も踏まえ、金融サイド・船主サイド両面から、網羅的、体系的、客観的、多面的、実用的に解説した本書は、「船舶金融分野におけるバイブル」ともいえる。

 

≪論文賞≫

西崎ちひろ著「見張り作業における操船者の状況認識と見張り支援に関する研究」
(東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科応用環境システム学専攻 博士学位論文2016年3月工学 課程博士)

受賞者略歴:
 東京海洋大学海洋工学部商船システム工学課程航海学コース卒業(卒業論文「レーダ画像処理による船舶映像の抽出に関する研究」、卒業時に海洋会賞を受賞)。同大学大学院(海洋科学技術研究科海運ロジスティクス専攻)修士課程(修士論文「レーダ画像処理による船舶の捕捉追尾に関する研究」)、独立行政法人海上技術安全研究所(現在の国立研究開発法人海上・港湾・航空研究所)勤務を経て、2016年3月今回受賞の論文により東京海洋大学博士(工学)を取得。又、日本航海学会英文論文誌”Transactions of Navigation Vol.1, No.1”(2016年3月)掲載の論文’Quantifying the Severity of Marine Collision Accidents Caused by Human Factors’により、竹本孝弘氏とともに2015年度日本航海学会論文賞を受賞。2016年東京海洋大学助教就任。
 
受賞理由:
 海難の中で最も多く発生している衝突海難の原因の8割を占める「ヒューマンエラー」について理解し、それらを抑制するために、これらヒューマンエラーの背後にある様々な要因も含めた対策として、操船者の行動分析、SAGAT(Situation Awareness Global Assessment Technique)を用いた状況認識の計測・分析、人間信頼性解析手法CREAM(Cognitive Reliability Error Analysis Method)を用いた操船者エラーの背後要因整理などによって、対策を提案した手法は評価できる。

 

≪論文賞≫
若土正史著「大航海時代におけるポルトガル「インド航路」の海上保険の活用について」
(神戸大学大学院経済学研究科経済学専攻 博士学位論文 2016年3月 経済学 課程博士)

受賞者概要/略歴:
 1973年 関西学院大学商学部卒業後、東京海上火災保険(株)入社。本社各部や支店営業に従事。この間、関西学院大学大学院商学研究科MBA取得。東京海上日動あんしん生命(株)LP営業部長等を経て退職後、神戸大学大学院経済学研究科博士課程前期課程ののち後期課程(専攻:中近世日本経済史)に進み、2013年3月から1年間ポルトガルを中心に海上保険史を調査研究のためポルトガル・コインブラ大学に visiting scholarとして留学。その後も度々渡航して、ポルトガル及びスペインの古文書館に眠る保険史料を解読。2016年3月今回受賞の論文にて、神戸大学博士号(経済学)を取得。2016年12月より同大学海事科学部非常勤講師(海上保険論)。
 

受賞理由:
 本研究は、今日の様々な保険の源流ともいうべき「海上保険」の生成史について論究したもの。具体的な取引事例を大航海時代のポルトガルとしたのは、わが国の戦国時代から江戸時代にかけ、ヨーロッパ人との交易取引の中で、海上保険の原型である「海上貸借」(通称「投銀」(なげがね))という制度が活用されており、当時のポルトガルの海上保険制度との関連に興味が沸いたため。ポルトガル・インド航路の関連史料は、リスボン大震災(1755年)の影響でほとんど消失しているため、ポルトガルの隣国スペインのブルゴス市の古文書館で発見された15件の海上保険契約取引史料から当時の取引実態を解明したが、これまで同史料を使った同テーマに関する先行研究は見当たらず、画期的な研究と言える。これにより、インド航路と日本航路における海上保険分野での連続性について証明されたのを契機に、日本の海上保険史研究の新たな重要研究課題となることを期待する。

 

≪功労賞≫
國領英雄氏

受賞者略歴:
 1933年生まれ。京都大学経済学部卒業。同大学文学部史学科卒業後、(社)日本海運集会所に入所し、仲裁業務に従事。1975年同所を退職して、神戸商船大学商船学部助教授に就任。その後同大学教授を経て、大阪学院大学流通科学部教授に就任。この間、日本海運経済学会副会長、日本港湾経済学会常任理事などわが国学会の要職に就く。又、(財)関西交通経済研究センターの調査研究委員会および近畿運輸局設置の検討会等の委員長や座長を務め、1990年には第50回海の記念日・近畿運輸局長表彰を受ける。現在、神戸商船大学名誉教授、大阪学院大学名誉教授。

受賞理由:
 京都大学経済学部で佐波宣平教授の指導を受け、更に同大学文学部において西洋中世史を専攻。若き日の(社)日本海運集会所での仲裁業務の経験を出発点として、氏の研究領域は海運から物流、港湾、航空等多岐に亘っている。海運だけをとりあげても、企業財務、金融、景気変動、密度の経済学、ネットワーク、法の経済学、市場、労働、バルク、クルーズ、フェリー、外国海運政策、内航海運等、広い範囲にわたる研究成果が残されている。
 常に新鮮な目で海運の今日的課題に向き合って研究を重ね、学会の発展と有為な人材の育成に尽力してきた氏の長年の努力と情熱に敬意を表するものである。

 

≪特別賞≫
 該当者なし

 

                                                       以上

当財団理事長に郷古達也、理事に久下浩一就任

当財団理事長 小林一夫(こばやし かずお)は6月15日付を以って退任して顧問に就任し、同日付にて郷古達也(ごうこ たつや)が後任の理事長に就任致しました。
又、7月1日付にて、久下浩一(くげ こういち)が新たに理事に就任致しました。
これに伴い、財団案内-役員・評議員・研究員のページを更新しました。