2025年山縣勝見賞受賞者決定

 当財団は、2008年に設立者の名前を冠した「山縣勝見賞」を創設し、海運を中心とする海事交通文化の研究及び普及発展に貢献された方々を顕彰し、その研究成果(著作・論文)や業績を対象として表彰する制度を発足しましたが、このほど「2025年山縣勝見賞」の受賞者が下記の通り決定しましたので、お知らせ致します(敬称略)。
 なお、贈呈式は7月24日に都内にて開催する予定です。

2025年山縣勝見賞受賞者概要

   

≪著作賞≫
該当者なし

≪論文賞≫
齊藤 学著「作業素質検査および操船シミュレータを用いた操船者のノンテクニカルスキル向上教育訓練に関する研究」
東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科博士学位授与論文 2024年度(2024年9月)

受賞者略歴
 1988年生まれ。2011年東京海洋大学海洋工学部卒業後に川崎汽船(株)海上職(航海士)入社。2019年より独立行政法人海技教育機構。海技大学校准教授、海技丸船長を経て本部学校教育部教育課主幹。

選考理由
 学術面のみならず実務上の価値も高く、陸上の事業者で適性検査として広く用         いられている心理検査の一種「内田クレぺリン検査」を、船舶の操船者評価に応用するという発想は独創的であり、海事分野における研究として高い新規性を有している。この研究を発展させることにより、より充実した教育訓練が実施され、衝突海難減少に結びつくことが期待される。 

   


伊藤 洋平著「アメリカ法におけるマリタイムリーエンの研究」
早稲田大学大学院法学研究科博士学位授与論文 2022年度(2023年3月)

受賞者略歴
 1978年神奈川県生まれ。2000年上智大学法学部法律学科卒業。2006年弁護士登録、戸田総合法律事務所に入所し、これまで多数の海事事件を担当。2018 年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。2023年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了、今回受賞論文により博士(法学)取得。

選考理由
 米国法におけるマリタイムリーエンについて200を超える判例を研究し、追及性、順位、船舶擬人化理論、準拠法といった多角的視点から詳細な分析・考察を行ったもので、わが国の船舶先取特権制度の今後のあり方等を考えるうえでも、たいへん有用な知見を数多く提供している。本論文の第1部および第2部は、2022年10月に日本海法学会から小町谷奨励賞を受賞しており、信頼性も高く価値のある論文である。

≪功労賞≫
池田 良穂氏(大阪府立大学名誉教授)

受賞者略歴
 1950年北海道生まれ。大阪府立大学工学部船舶工学科卒業。1979年同大学大学院博士後期課程を修了し工学博士。同大学助手、講師、助教授、工学研究科長を経て2015年に定年退職。同大名誉教授、大阪公立大学客員教授。専門は船舶工学・海洋工学・クルーズ客船等。300を超える学術論文を発表し、船舶に関する書籍の出版も70冊を超える。また新聞、雑誌等への寄稿、テレビ出演なども多数。

選考理由
 造船工学分野の学習教材作成や船舶工学の啓発書の執筆などを通じて、船舶への理
解や認知度の向上に寄与した功績に対して。

≪特別賞≫
瀬戸内海巡回診療船 済生丸
 瀬戸内海巡回診療船「済生丸」は、昭和36年5月、済生会創立50周年記念事業として当時の岡山済生会総合病院の大和院長によって発案され、昭和37年12月に運航を開始、離島を巡回して診療と検診を行ってきた「海をわたる病院」です。歴代の済生丸(一世号、二世号、三世号、100)の累計活動実績(1962年12月~2024年3月)は、診療島嶼延数13,249島、受診延人員627,441人であり、地域への貢献は計り知れません。海事交通文化を体現し、長期にわたり社会に貢献した功績は山縣勝見賞(特別賞)にふさわしいものである。

                                                     

以上